養成課程は逃げ道ではない!二次試験と養成課程を徹底比較しました。

さて、今年も二次試験が修了しました。結果は神のみぞ知る、ですがダメージ背負ってしまっている人のほうが多いのではないでしょうか。過去の合格者の殆どもそんな感じだったと思いますけどね。この段階で合格を確信している人はごく一握りです。

今年は全体的に難易度高かった、との噂ですが、相対評価なので難易度が高かろうが低かろうが自分の合否にそう影響はないかと思います。難しいのは自分だけでなくみんなですしね。素点でいうと平均点低くても上位20%くらいは合格することに変わりはないですから。難しいのならなおさら自分のできの悪さなんて気にする必要ないんですけどね。

二次試験に打ちのめされて養成課程を検討している人もいるようです。

二次試験→実務補習も、養成課程の実習も、どちらも体験した立場から、二次試験→実務補習と養成課程の違いを紹介します。一部以前の記事とも重複していますが、どちらの道へ進むか迷っている人に参考になればと思います。

養成課程を紹介しているブログもあるにはありますが、いくつか見てみましたが養成課程の実態を知らない人が、養成課程の募集概要(期間や費用)や募集する側の受け売りをただまとめているだけであり、実際の中身については知らないまま書かれているものばかりでした。日程やカリキュラムといった調べればわかる概要レベルしか書かれておらず、それどころか嘘を書いてあるものすらありました。

おそらく本記事が二次試験→実務補習と養成課程を日本一比較検討できるブログ記事です。ですがこのブログにたどりついた人はすでに二次試験とは、養成課程とは、ということは理解されていると思うので、ググればわかる内容についてはあまり書きませんのでググってください。ググったけどわからないよ!というところでお役に立てればと思っています。

中小企業診断士になる方法

中小企業診断士になるためには一次試験を合格後、①二次試験に合格した上、実務補習を15日間(または実務従事を15日間、実務従事と実務補習を合わせて15日)クリアすること、②養成課程を修了すること、のどちらか2つの方法があります。

二次試験

こちらのメリットはなんといっても費用がかからないこと。養成課程では200万円もの費用がかかりますが、二次試験であれば予備校に通ったとしても数十万、独学の場合テキストを買っても数万円ほどです。もちろん受験料等実費は必要ですが、養成課程と比較するとかなり有利です。

実務補習も参加費だけで1回55,000円かかります。実務補習参加にあたってノートPCを準備したり交通費がかかったりしますが、これは養成課程も同じことです。

二次試験に一発で合格すれば時間的な面でもかなり有利になります。

デメリットは不確実性が高いこと

中小企業診断士の二次試験は運の要素も多分にあります。採点基準が公表されないため、合格に近づいているのか遠ざかっているのか、何がいいのかダメなのかは神のみぞ知る世界です。またボーダーラインの240点前後には非常に多くの受験生がいるとも言われているため、240点に達するか達しないかは半ば運のようなところもあります。同じような解答を書いたとしても5000人分も採点してたら同じ点数になるかどうかもわかりませんしね。

努力したからといって合格できるわけじゃないというのが中小企業診断士の二次試験です。ですが費用や時間、仕事上の制約から、二次試験の合格を目指すパターンが中小企業診断士を目指す上では王道パターンとなります。資格取得までにかかる時間が短いことや(1回2回の試験で合格すればですが)、費用が安いことは養成課程と比較すると大きなメリットです。また平日にどうしても時間が取れない人は二次試験を選択するしかないとも言えます。実務補習は平日にあるのですが。

二次試験では、養成課程で半年~2年かけて学ぶことを2か月(一発合格の場合)で短期集中で学ぶという点があります。二次試験は中小企業診断士して活動するために必要な知識が凝縮されています。「なんでこんなこと勉強するんだろう」と思う人もいるかもしれませんが、実際診断士として活動すると、一次試験も二次試験も勉強した知識を総動員しています。結局必要だから試験に出ているのです。

ただし、養成課程と比べると試験対策で学ぶことは狭く浅く、必要最低限の知識のみです。合格後には自分でさらなる研鑽を積む必要があります。

養成課程

一方、一次試験合格後に養成課程を選択するパターンも増えてきているようです。実施機関にもよりますが半年~2年間、座学、演習、実習を交え中小企業診断士に必要な知識をしっかりと学ぶことができます。それだけ聞くととても素晴らしいことのように思えますがそんなに甘い世界でありません。

養成課程といえば二次試験に合格できない人が行くところでしょ、と思っている人も多いと思います。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました(嘘です、そこまでは思っていませんでした)。ですが養成課程の実習に参加し、受講生の話をいろいろ聞いたことでそんな気持ちは微塵もなくなりました。

演習や講義を通じ、二次試験で学ぶことを体系的に広く深く学ぶことができます。あとはMBAを取得できるコースもあるのがメリットでしょうか。

二次試験→実務補習VS養成課程

VSと書きましたが優劣をつけるためのものではありません。

登録までの期間

登録まで、二次試験合格後の場合一般的なケースでは実務補習5日間コースを3回受講することになります。15日間コースも結局は5日コースを3回続けて行うということで、1つの企業に15日従事するわけではありません。実務補習は2月、7月、9月に実施されます。この2,7,9月に5日ずつ3回受講というのが一番多いパターンではないでしょうか。中には年に1回しか実務補習を行わない等といった人もいるようです。合格後3年以内に登録しなければいけませんが、その間のペースは自分次第で決められます。

また、協会以外の民間企業の実施している実務従事、知り合いの会社、もともと付き合いのあった会社のコンサルティングを実施することでも実務補習の日数と代替することができます。実務補習と実務従事合わせて15日が登録に必要です。実務補習を一度も受けず15日間すべて実務従事ということも可能ですが、実務補習せず登録するのはオススメできません。もともと中小企業のコンサルをやっている人でなければ一回は受講することをおすすめします。

実務補習が辛い、苦しいという私より前に合格した人がいました。私が実務補習を受けた限りでは辛い、苦しいという思い出は皆無です。むしろ楽しい要素しかありませんでした。養成課程の実習を体験したあとだと物足りなさしか感じませんが、それでも実務補習を一度でもやったのとやってないのでは全然違います。

一方養成課程は実施期間によりますが半年~2年と比較的長期間かかります。また、演習や実習も一定以上の出席が必要なため拘束される時間も長いです。

登録までの期間は二次試験のほうが有利

カリキュラム

先の記事でも書きましたが

養成課程はカリキュラムも決まっていますのでスケジュールはなかなかハードです。福岡県協会の実施している養成課程では演習・講義は火・木曜日の18:20~22:00、土曜日は8:50~17:10です。実習があれば平日日中に企業に訪問することになります。「仕事と両立しながら」資格を取れるとは言いますが、両立できる人はごく少数に限られるでしょう。できたとしてもかなりハードです。演習、講義はこの時間だけでなく、集合しない日も自主学習を進める必要があります。これを半年、1年と毎週毎週行うのは想像以上に辛いと思います。もちろん全体の◯%出席しなければならないというルールもあります。

中小企業大学校も平日フルタイムで演習や講義、実習があるためその間に仕事をすることはできません。金融機関や公的機関等から派遣されている人ならともかく、そうでない人が半年間も無給で過ごすことなど不可能に近く、決意を持って貯金を崩し、無職となる覚悟で望む必要があります。

その他、大学院やMBAコースのことはあまり詳しくはありませんが、講義や演習は土日のみだとしても、実習は平日に行われることも多いでしょうからどこも同じような厳しさはあるでしょう。仕事しながら休日がなくなるわけですし。。

一方、二次試験組はカリキュラムといっても決まっているものはなく、二次試験をクリアするための対策をする必要があります。養成課程は幅広く勉強するのに対し、二次試験対策ではやはり試験に頻出の分野の勉強を狭く深く行うことになるでしょう。試験に出ないところを試験前に重点的に勉強する人はいないと思います。試験対策では試験テクニック的なものも必要だったりします。

カリキュラムは養成課程のほうが充実で実戦に近い。

実習の違い

これも前回の記事でも書きましたが、実習の密度が違います。

実務補習は5日間、養成課程の実習は11日間あります。バタバタと限られた時間でヒアリングして内容をまとめる実務補習と比較し、養成課程ではヒアリングはじっくり行えますし、従業員の方へのアンケート、販売データの分析、標準時間の測定、作業分析等も可能です。

当然その分報告書の量も内容の充実度合いも変わってきます。実務補習では1人15ページ、合計100ページほどでしたが、養成課程では全体で150ページ以上になることもあるようです。養成課程の報告書の作成は自分自身は行っていませんでしたが、私が参加した実習の報告書を拝見したところ、自分が実務補習で作成した報告書とは比べ物にならないほどの充実した内容でした。

また、5回の実習でいろいろな役回りを経験できるのも強みでしょう。実務補習は多くて3回ですから、担当できないポジションもどうしても発生してしまいます。先生によっては担当を勝手に決めてしまう場合やそれぞれの希望がバッティングする場合もあり、必ずしも希望の担当を実施できるわけではありません。やはり養成課程のほうが計画的に幅広い経験を得ることができます。

実習は養成課程のほうが圧倒的に充実。

資格取得の難易度

一番キツイのがここ。勘違いされがちですが養成課程は入学=資格取得、ではない。しっかりと講義、演習、実習で一定以上の成績を残し修了する必要がある。

養成課程では成績も厳しくつけられるため一定の基準を満たすことができなければ途中で退学、もしくは修了不可、ということになります。この場合は当然ですが中小企業診断士の資格をもらうことはできず、お金と時間をドブに捨てるに等しいこととなります(それまで勉強したものは残るので全く無駄ではないので若干言い過ぎですが。。)

成績の基準もなかなか厳しいです。とりあえず出席だけして当たり障りのないことだけ言っているようでは合格基準を満たすような成績はもらえませんし、実習の際はチームワークの面でも評価されます。こっちは金払ってるんだからといって適当な態度でいると修了は難しいでしょう。

養成課程は入学さえすればみんな卒業して中小企業診断士になれる、というように紹介しているブログがありますがこれは嘘です!養成課程に入っても中小企業診断士としての能力がないとみなされると資格はもらえません。

一方、二次試験においては最低合格点さえクリアしてしまえば、240点でも400点でも立場は変わりません。しかし240点といっても相対評価で上位約2割に値しますので厳しい戦いにはなります。

どちらが楽、キツイという話ではなくどちらもキツイ。キツさが違う。

コネの作りやすさ

養成課程出身の方のほうが、資格取得後即独立というパターンが多いようです。演習や実習を通じで指導員の先生とも深く関わりあえることからお仕事をいただくチャンスも多いようです。実務補習だと知り合う先生は3人✕5日間ですからね。コネづくりができるので独立後のスタートダッシュが効きやすいような話を聞きます。また、同期となる人がたくさんでき、長期間ともに過ごすわけでそこで関係性が深まるメリットもあります。

実務補習組は研究会や診断士協会の組織と関わってコネを作っていく必要があります。

二次試験合格の場合、実務補習も終わったところで大したコネも作れず、5年後の更新を待たずして活動しないという人もいるようです。まあコネなんて自分のがんばり次第でいくらでも作れるのですが。黙っていてもコネづくりが進むのは養成課程のほうでしょう。

先輩や同期とのコネは養成課程のほうが広く作りやすい

比較結果

二次試験養成課程備考
登録までの期間二次試験は合格後、登録までのペースは自分次第
カリキュラム
実習の充実度
資格取得の難易度どっちも楽ではない
コネの作りやすさ二次試験組も自分のがんばりしだいでどうとでもなる

養成課程は覚悟を持って行くところ

結果的に私が思ったのは、「養成課程は覚悟を持って行くところ」です。養成課程は前記のように費用、時間ともに負担がとても大きいですし、入学したからといって資格が取れるとも限りません。

二次試験から逃げて行くようなところではありません。私が携わった方は皆熱意を持って自ら養成課程で学びたい気持ちを持っている方ばかりでした。二次試験の勉強が嫌で逃げた人は、結局養成課程でも苦しむだけだと思います。ある意味、二次試験に向けて集中して勉強するより、より強靭な覚悟を求められます。

まとめ

二次試験に合格できないから逃げ道として養成課程にいく、となると甘い世界ではなくやはり厳しい道が待っているでしょう。お金を払えば済む世界ではありません。途中での退学や成績が足りず修了できないこともありますので養成課程に進むとしても覚悟は必要です。

二次試験の不確実性もあり、「試験に合格できないから養成課程に進む」という後ろ向きな理由があることも理解はできますが、それよりもちゃんとした目的と覚悟を持って養成課程に進むべきではないかと、今回養成課程の実習に補助員として参加して強く思いました。

養成課程の参加者に話を聞くと「一年間厳しい環境でやってきたので、これが終わると養成課程ロスになる」とおっしゃる方もいました。時間だけでなく内容も充実していたのだと感じます。実務補習なんて5日やっても「次早くやりたい!」と思ってもロスにはならないですしね。

結局、二次試験組と養成課程組のどっちが優れているということではありません。養成課程で学ぶことを二次試験で問われているわけで、それを短期間で試験に合格するように学ぶか、長期間でじっくり学ぶかの違いです。資格さえとってしまえば本当に違いはありません。

どっちにせよ合格後は勉強することがいっぱいなのは変わりないですし。勉強が嫌いな人にはどっちにしろ厳しい世界です。

二次試験→実務補習に向いている人

  • 資格取得にあまり費用のかけられない人
  • 仕事等であまり平日に時間の取れない人
  • 早く診断士資格を取って登録して活躍したい人
  • 独立せず企業内で活動したい人
  • 地理的なハンデで養成課程には通えない人
  • 実務する気はないが資格だけ欲しい人

養成課程に向いている人

  • 強烈な独立志向のある人
  • コネはないが早めに独立したい人
  • 平日に時間の取れる人
  • 費用負担をいとわない人

どちらを選んだから正解だ、間違いだ、という話ではありません。自分がどうなりたいかを考え悔いのない選択をしてください。

他にも「二次試験と養成課程でこんな点の違いが気になる」等あればリクエストいただければわかる範囲でまとめていきます。

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