読了 失敗の科学

年末年始あたりに読みました。いやこれKindle Unlimitedで読み放題とか最高すぎるでしょ。

この本、医療業界での失敗事例と、航空業界での失敗事例から始まるんですけど、呼んでいる最中に1月2日のJALの事故がありまして、タイミングとしてはドンピシャだったんですが、本を読んだだけの上辺の知識だけで感想を語るのもなんか憚られるので感想文を書くタイミングを逃していました。

失敗を様々な観点から解説し、「なぜ失敗は起きるのか」、「なぜ失敗は繰り返されるのか」といった面を解説した本です。冒頭の医療業界や航空業界の失敗事例については「ただの頭カチカチの老害が起こした事故やん」としか思えませんが、それでは再発防止にはつながりませんね。

魔女狩り症候群

個人的に大変興味深かったのは「魔女狩り症候群」というところです。人は失敗やミスがあると犯人を探して叩く、これがまさに現代のSNS社会で行っていることに過ぎません。

JALの事故だって海上自衛隊の航空機のパイロットが指示を見落としてたとか間違えたとか、管制官の指示がおかしかったとか、重大な事故があると「誰々が」と言いたくなる人は私も含めてかなり多いようです。

この本では「人を責めるのではなく、間違いが起こらないような仕組みづくりが必要」とされています。確かにそうなのでしょう。今回の事故に関しても、海保機と管制でのコミュニケーションミスがあったのであれば、「絶対に勘違いしない通信を行う」、といった感じです。しかしいわゆる無敵の人が起こすものとか、仕組みづくりだけでどうにかなるのかなという気もします。

もちろん人だってミスをしたくてしているわけではないので、起こったことについてグチグチ言うのはあまり好きではありません。ただ人は誰かの責任にしたがるし、誰かの責任にしたほうが楽なのでしょう。ですが、それではミスは繰り返される、仕組みづくりが重要というのは、改めて感じさせられる部分でした、

人はミスを隠し、信じ込むようになる

もうひとつ面白かったのは「人はミスを隠し、信じ込むようになる」という部分でした。

ミスを指摘され続けた結果、組織としては一見ミスが減った状態になるようです。とはいえミスはなくなっていないのです。

というのも、ミスを指摘され続けた人間は、だんだんとミスを報告しなくなるようなのです。報告されるミスが減るので結果としてミスがなくなった、とされてしまうのです。隠したほうもミスをしたことや、ミスを報告しなかった事実を正当化し、「ミスはなかったもの」と信じ込むのです。

なんか思い当たるところはありますね。そら人間だもん、ガミガミ言われるのわかってたらそら自分からは言わんようになるわ。他の多くの人もそのようで安心したと思いつつも、当然ですが決して健全な状況ではありません。どれだけ強くミスを指摘してもペナルティを課してもうまくいかないのです。それどころか組織としては悪い状況に傾きます。

たまに「小さなミスでもヒヤリハットでもなんでも報告しよう」なんて組織がありますけど、そんなものうまく回っていくとは思えません。もちろんミスを指摘しない、改善する風土がかなりのレベルで高まっているのであればそれもうまくいくのでしょうが、人は自分のミスなんて公開したくないに決まっています。

ミスを報告する風土がなければ、何がだめだったのかを知る機会もなく、結果的には改善する機会さえ失われます。これはミスをしたほうというよりも、組織や風土の問題であると感じました。挑戦できない文化を作るのはやはり組織やリーダー層です。いくら口で言ってもだめ。

そのため、航空業界ではミスを公にはするものの絶対に個人の問題とせず、事故の原因はブラックボックスなどで検証して次の事故が起こらないように活かす、そのサイクルが確立されています。SNSなんかを見ていても、今回の事故でも航空業界関係者らしき人は「絶対に管制官や海保機のパイロットにしない」と言っていましたもんね、素人はどいつが犯人だと騒ぎ立ててましたけど。私自身もこの本を読んでなかったら誰が悪かったんだこんなこと起こるわけないだろ、みたいに言っていたかもしれません。

まとめ

若干精神論的な部分もありますが、全体的には読みやすく、事例をもとに語られているためスッとはいってきました。Kindle Unlimitedでは読み放題なのでぜひおすすめしたいです。

もともと、人前で強く人の非難をするタイプの人が嫌いでした。いくら指摘される方が悪かったとしてもね。本書を読んでそのようなタイプがより嫌いになりました。罪を憎んで人を憎まずではないけど、人を叩くのではなく、ミスをなくす仕組みを作り事が肝心。結果的にはそれが改善へとつながるのだと、意識していかなければと改めて思いました。

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